Everything Flows vol.6 「箱(はこ)」の話。

代表の高木です。

街を歩いていると、真新しいスーツに身を包んだ新社会人の姿を見かけるようになりました。みんな、会社に入って「さあがんばるぞ!」という感じでしょうか。

さて、今日は私が、出版社勤務時代にある編集長から言われた「会社」についてのお話です。私は今の会社を立ち上げるまで、5回転職をしています(多いですね…)。

最初の転職(厳密に言うと、フリーになりました)の時、当時働いていた週刊ザテレビジョンのK編集長に言われた言葉が、今も忘れられません。

場所は、東京・四ツ谷にあるラルゴというイタリアンレストランでした。

イタリアンにしては珍しい深夜2時、3時まで営業しているレストラン(調べてみたら、まだ食べログに載っていました!!でも、最近、閉店したみたいです、涙)。

この店は、K編集長のいきつけの店でした。

週刊誌だったので、だいたい毎日、どこかのページの締め切りがあるのですが、K編集長は、時計の針が真ん中を超えたあたりからよくお店に行っていました。

かねてから「編集長、お話があります」と伝えていた私は、K編集長から「今なら、話聞けるよ」と深夜のラルゴに呼び出されました。

すでに、ワインを数杯飲んで、ほろ酔いのK編集長に、私は率直に「会社を辞めて、山岳民族の孤児院の取材をするためにタイに行きたい」と辞意を伝えました。

その時、言われた言葉です。

「なあ、高木、会社なんてさ、しょせん、『箱』なんだよ、『箱』。

言われてすぐには、言葉の真意がわかりませんでした。

K編集長は続けました。

「この東京に会社なんて何社あると思う? こんなにビルがいっぱい建ってて、そのほとんどに会社が入っている。

俺たちが入っているのは、ただの『箱』なんだよ。それは、コンクリートの建物のことだけじゃない。会社や組織なんて、結局はただの入れ物ってこと。

本当に大事なのは、その中で出会って生きている人間同士なんだよ。

だから、俺としてはお前が辞めようが、辞めまいが、あんまり関係ない。まあ、編集長としては、編集部員に辞められるのは痛いよ。人事部の査定にも響くしな(笑)。

でも、それより大事なのは、そこで出会った人の縁を大切にするってことなんだよ」

出版の世界は、フリーランスの人も多いので、特にそういう考えが強いのかもしれません。

もちろん、会社の中には、名前やブランドを大切にする企業や、創業何百年の歴史を誇る老舗企業もあるので、単なる『箱』と言い切ってしまうのは、少し乱暴かな、とも思います。

でも、転職を繰り返して、フリーも経験して私個人として、一番しっくりしているのが、このK編集長の考えです。

やっぱり、どんなにブランドがあっても、老舗でも結局のところ『箱』は『箱』で、大事なのは、そこに集う人々なんじゃないかな、と思います。